【円】
伊羽邸から帰宅して、親父殿に話を聞いて──全て知った上で伊羽と手を組んだ奴が自分の前にもう一人いたことを知り……
やはり血は争えない
ということなのかと、俺が再確認した数日後。
俺の予想通りに
番頭就任の話に続く、もう一つの話──
俺と風佳の婚姻の話が、親父殿の口に上った。
今年は参勤交代で殿様が江戸に行く年で、親父殿も殿様について卯月から江戸詰めだと言っていたから、
その前に……と、
絶対そういう運びになるだろうと覚悟はしていたが……。
正直、俺は迷っていた。
以前、あの遊水の奴が俺に言っていた、
「物事にはね、全て抜け道ってもんがあるんだ。
もしも『本当に本気で』結ばれたいと思うなら──方法はいくらでもあるんだぜ」
という言葉の──意味。
あれから考え続け、
この「抜け道」が何を示すのか?
今の俺にはわかる。
しかし──簡単に許されるようなことじゃない。
それもわかっていた。
まあ、普段好き勝手やってる俺でも、さすがにそのくらいの常識はある。
遊水がこんな話を俺にしたということは、あいつならその「抜け道」を迷わず使うということなのだろうが……
そもそも俺とあいつとでは立場が全然違うワケだし──。



