恋口の切りかた

反射的に、

身をのけぞらせながら
右手に提げていた納刀したままの刀で刃を弾き──


──槍か!?


長く延びた柄が視界に映り込み、俺はその武器の正体を悟った。



「中、てめえ……何の真似だ!?」

すっかり陽の落ちた蔵の外で、
藍色の夕闇の中、構えた槍の切っ先を俺に向けた若侍に俺は怒鳴った。


「我が主の命です、御免!」


中は短くそんなセリフを寄越して、槍を繰り出した。


「はあ!?」


俺は意味不明の回答に混乱しつつも、
右手に握った刀の鞘から、左手で抜刀してその鋭い突きをいなす。


主の命って……俺の後ろにいる伊羽の命令って意味か?

たった今、同盟関係が成立したばかりでどういうこった!?


疑問が思考を埋め尽くしそうになるが、ゴチャゴチャ考えるのは後回しにして俺は目の前の攻撃に集中する。


中の突きをかわし、あるいは刀で流し──


──槍、長ェな。


改めて実感する。


クソ、間合いが──遠い。
こちらの間合いに全然届かない。


防戦一方だ。


よく、刀で槍と戦うには相手の三倍の力量が必要だ、などと言うが──


──面倒くせえッ!


「だったら、これでどうだ!」

俺は大刀を右手に持ち替え、左手に腰から抜いた小太刀を構えた。

「む──二刀流か!?」

俺の構えを見て、一度槍を引き間合いを取り直す中に、



「うおらァッ」



間髪入れずに、俺は手にした小太刀を投げつけた。