恋口の切りかた

薄暗い座敷に通されて待つことしばし──

五年ぶりにまみえた伊羽青文は、相も変わらず不気味な覆面姿だった。


あれから俺は背も伸びたし、見た目は相当変わったと思うが、

同じ時間を経過しているのに、こいつのほうはこんな姿なので何一つ変わったように見受けられない。


伊羽は俺を一目見るなり、


成長した俺の外見に感想なり感慨なりの一つも口にすることなく、

覆面頭巾ごしにもわかるほどあからさまに大きく溜息を吐いて、


「突然の来訪、何事かと思いましたぞ。
本日はどのような用向きで参られた?」


開口一番、迷惑そうに言い放ちやがった。


「なんだ、訪ねてきてほしくはなかったって様子だな」

「無論だ」


オイオイ。

これはまた露骨な言われようだ。


「先法家のご子息とあらば門前で追い返すワケにもゆかぬため、招き入れるより他はないが──早い」

「あァ?」

「そう、早い……早いな──貴殿がここを訪れるのは早すぎる」

「早すぎる?」


五年前に耳にしたのと同じ、くぐもった特徴的な声でボソボソと喋る男に、俺は問い返した。


「そうだ。

私は確かに円士郎殿と昵懇にしたいと口にしたが、
晴蔵様から、先法家と家老との結びつきは快く思わぬ者もいると釘を刺されたのはお忘れか。

家督を継ぐ前から、このように伊羽家を正面きって訪問などされては、

いずれ家督を継いだ後のことを考えて貴殿が私に手を回しているか、
あるいは逆に、私が根回しでもしようとしていると公表しているようなもの」


くくく……と低く笑った俺を見て、城代家老は怪訝そうに、

「何が可笑しいのですかな?」

と言ってきた。


想像どおり──


「用心深い奴だと思ってな」

「円士郎殿は奔放に過ぎますな」


ふ、と俺は口元に笑みが浮かぶのを感じる。

確かに、この用心深さは俺にはない貴重なものに思えた。