「宗助。この国も過去、危機に直面したことがある」

「存じています」


俺が言うと、宗助は頷いた。


「それは──十年前の改易騒動のことか?」

鬼之介が言った。


「ああ。それを救った奴がいる。
当時、今の俺や留玖よりも幼い子供の身で、だ」

「それって……」

留玖が大きな目を瞬かせた。


「は。再びまみえてやろうじゃねえかよ」

俺は不敵に笑ってみる。





──いずれ大人の世界で再びまみえる時までに、その器量、磨かれよ。





記憶の中には、五年前に城代家老が寄越してきた言葉が刻まれている。


いずれ足を踏み入れることになる世界で、

あの不気味な男を味方とするべきなのか、敵とするべきなのか……


俺は未だ猶予が残されているうちに、

あの何も出来なかった子供の頃から、五年という時を経た今の自分の目で



確かめたいと考えていた。