恋口の切りかた

「は──?」

鬼之助が間の抜けた声を出し、

「えええ──?」

留玖がびっくりした様子を見せた。


「てめえのカラクリは面白ェし気に入った。その発明の腕、俺が買ってやるよ。

それと──さっきの生活が苦しいって話も気になったし、何でなのか後で詳しく聞かせろ」


言い放った俺をたっぷり十秒は眺めてから、鬼之助は口を開いた。

「それは、この国ではなく結城家に仕える陪臣(*)になれということか?」

「おう」

「おうって──貴様もまだ、聞けば毎日プラプラ遊び歩いている部屋住み(*)の身だろうが!」

と、鬼之助はあきれた。

「それでよくも家来になれなどと言えるな。
今の貴様に自由になる金があるのか?」

「んー、銀治郎んトコの賭場で、博打で稼いだ金とかかな」

「オイコラ……」

鬼之助は絶句した。

「まあ、俺もいつまでも遊んでるつもりはねえよ」

と笑って、俺は宗助や留玖をチラリと見た。

「つまりこれは互いにとっての先物買いってことだ。
将来家督を継いだら、正式に雇ってやる。
何も伊達や酔狂で言ってるワケじゃねえんだぜ?」

このご時世だ。
こいつの発明品は──それこそ物好きな殿様や江戸の人間には受け入れられるかもしれない。

そういう部下がいるというのも、悪くないだろう。


まあ、半分以上は俺のシュミ──つまり伊達や酔狂ってコトになるのだが。


「だからそれまではてめえで何とかしな。道場破りで荒稼ぎするのは我慢しとけ」



(*陪臣:家臣の家臣のこと。ここでは殿様の家来ではなく結城家の家臣という意味)

(*部屋住み:時代劇などでお馴染みの遊び人。武家の次男、三男など、家督を継いでおらず役職に就いていなくて、実家に養ってもらっている居候身分。現代で言うところのまさにニート)