恋口の切りかた

唖然とする俺たちの前で、鬼之助は、

「いやむしろ、是非とも虹庵殿の弟子に!!」

と、布団の上に頭をこすりつけた。


な──何なんだ急に?


「私のような無頼の輩に丁寧な御指南、その懐の深さに感服致しました。
しかし若輩の私には依然、己の考えを捨てることなどできませんが──」

「ああ、それで良い。
君はまだ若いのだから、道などゆっくり考えれば良いだろう」

「ははッ! 是非とも虹庵殿の下で、己の道を見出したく」


あまりの豹変ぶりに俺は目を丸くすることしかできなかったが、
虹庵はくすくす笑って、鬼之助の申し出を断った。


「私は医者だ。弟子入りと言っても──君は、医師になりたいワケではないだろう。
鏡神流の門下に入るなら、晴蔵殿の弟子になりなさい」

「虹庵殿がそう仰るのであれば」


うむ、と頷いて、


言葉を失っている俺や留玖に虹庵は、


「思わぬ強敵出現だな。
鏡神流を継ぎたいなら、気を引き締めなさい」


と、面白そうに告げた。


では私はこれで、と飄々と背を向けて、
虹庵は、すっかり陽が落ちて暗くなった夜道を町へと引き上げて行き──



「と言うわけだ。
これから同じ門下だ、仲良くしようじゃないか」

固まったその場の空気を震わせて、鬼之助が言った。