恋口の切りかた

「人間が扱える力の全てを駆使して、辿り着ける極限の強さを求めるっていう、
てめえの持論も気に入ったしな」

鬼之助はそう語る円士郎を、穴が空くほど眺めてから、

そばに座る虹庵に視線を向けた。


「……ボクのカラクリを見て、最後まで試合をやらせた流派はここだけだぞ」

「そうかね。
その結果、君は全身、打撲・脱臼・骨折十八箇所だ。
医者としては、やはり止めておくべきだったと後悔したけれどね」

虹庵は笑いを堪えている様子でそう言った。


鬼之助は目つきを険しくする。

「……あのとき、師範代殿はボクの考え方を、切り捨てるには『惜しい』と言ったな。それはどういう意味だ?」

虹庵は、「それは私が蘭学を学んだ者だから、ということだよ」と答えて、


続けた。


「君が引き合いに出した織田上総介にしてもそうだが、彼は西洋の合理主義に基づいた考え方を好み、それを積極的に兵法にも取り入れた人物だ。

宮川殿の持論や発明は、西洋の進んだ物の考え方に近いと感じた」


私はなるほど、と思った。
確かにそうかもしれない。


「円士郎と──それに、鳥英殿のところでよく見かける遊水殿も、こういった合理的な思考は好きだろう」

私はちょっと驚いて、隣で煙草をふかしている遊水を見上げた。


円士郎が蘭学を好きなのはよく知っているけれど、遊水さんも……?

まあ、彼はそもそも紅毛人の血を引いているから、ということもあるのかな。


「フン、だが師範代殿は、それは武芸ではないと言った。
では──師範代殿の言う武芸とは何だ?」


虹庵は鬼之介の問いに──



私を見た。



「それは彼女が、最も良く体現している」