恋口の切りかた

うーん。

虹庵は知らないけれど、遊水は宗助には危うく殺されそうになっているのだ。


でも、その辺は遊水が
あくまで宗助は都築に従ってやったことだと割り切っているのか──

宗助に対する遊水の態度は
嫌みたっぷりではあっても、そこまで険悪なものではない。

あんな目に遭って本当に割り切れるのだとしたら、凄いことだと思うけれど、


遊水さんって……、


表面的には何とも思っていないような態度をとっていても
実は根に持ってそうな気がするからなあ……。


虹庵はそんな二人と、私や円士郎を見回して、

「奇妙な人間関係だな」

とごちて、低く笑いを漏らした。


私はまったくその通りだと思った。




「で? なんで宗助が心の一方を解けたんだ?」

円士郎は事情がよくわからない私に、あの時何が起きたのかを軽く説明して、

促すように宗助を見た。


「『心の一方』とは、我々のような者が使う『幻術』に似た要素があるのです」


宗助は気絶したままの鬼之介を見下ろしてそう言った。


「詳しくは申せませんが、相手の心を狂わせて錯覚により『まやかし』を見せ、目を眩ませるのが幻術とするならば──

まやかしを見せる代わりに、相手の心を狂わせた状態で『動けぬ』と錯覚させるのです」

「錯覚だァ?」

円士郎が納得のゆかない様子で顔をしかめた。

「俺が思い込みなんかで動けなくなったってのか?」


「円士郎様、これは円士郎様の頭の表面、思考の表面の思い込みとはワケが違います。

かけられた者は気づくことのできない、心の深部にかける錯覚です」



だから何人(なんぴと)にも抗えません、と宗助は冷たい金属のような声で言った。