恋口の切りかた

「彼がただの武芸に長けた結城家の中間ではないこともね。
兄上も私も、さすがに宗助とこれだけ手合わせを重ねて何も気づかないと思うかい?」

宗助が虹庵に「お見逸れ致しました」と深々と頭を下げて、


虹庵はここで、部屋の外に物言いたげな視線を送った。


「──ああ、どうぞお構いなく」

と、空いた障子の向こう、縁側に腰掛けて庭を眺めながら煙草を燻らせていた遊水が言った。


「私はそこの宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進様にちょいとお話がありまして。

差し支えなければ意識が戻るまで、ここで待たせていただきたいのですがね」


煙管の煙をフウッと吐き出しながら、遊水はそんなことを言った。


虹庵は小さく苦笑して、

「まあ、君は我が兄晴蔵殿が出入りを認めている者のようだし。
円士郎たちとも交友があるようだから、私は構わないが……」

遊水の毒の手当をした時のことを思い出したのか、そう言ってから、

宗助を横目で見た。


「ああ、あの者とも少々顔なじみで、俺のことなら……」

宗助が言って、

「ええ、そこの宗助さんのことなら『嫌と言うほど』良く存じてますぜ」

遊水が、白い顔に嫌みたっぷりの笑いを浮かべた。