恋口の切りかた

ますますポカンとした顔になる冬馬のそばで、
俺はあの辻斬りとまみえた夜のことを思い出す。

「俺も留玖も、本来こういう面白い話は大好きだし──なんだかんだ言って、留玖も周りを見ずに突っ走ることがあるからな」

まさか熱があるのに、留玖が深夜に屋敷を抜け出して俺を探そうとするとは思わなかったので、
あの時は本気で焦った。


「お前、そんな俺や留玖からいさめられたら終わりだと思わねえ?」

「……思いますね」


この野郎……!

まあ、そこで冷静に頷くところがやはり冬馬だ。


「ったく、お前は冷静沈着そうに見えて、そのすぐカッとなるクセを何とかしろよ。
そこだろ、一番の問題は」


見開いた目で俺に視線を送ってくる冬馬に、俺は笑いかけて、


「お前、真剣で人を斬ったの初めてだろ」

「はい」

「まァ、あれだよ。俺に比べりゃ随分マシだ」

「はい?」


俺なんか初対面の怪しい男が用意した相手斬ったんだぞ。
武士失格どころの話じゃねーだろ。

言葉には出さずに心の中で付け加える。


その怪しい男は、松の木の下の庭石に腰掛けて、
いつの間に取り出したのか、人んちで勝手に煙管をふかしている。


「は! 最初の実戦で相手の腕切り落として、更に殺そうとするなんざ──お前もいい度胸じゃねェか」


俺はニヤリと口の端を吊り上げて、冬馬の肩を叩いた。


「さすが俺の弟だぜ!」