恋口の切りかた

「どうした? 円士郎」

立ちつくす俺に虹庵が声をかけた。

「いや……」

「君の勝ちだ」

虹庵の言葉に、俺はもう一度失神している鎧武者を振り返って苦笑した。


「つうかよ、俺の勝ちじゃなくて、こいつの勝手な負けだろ」

「そうだな」


自滅した宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進を見やって、虹庵も笑い、

「これで三勝二敗。こちらの勝ちということで良かったかな?」

道場破りの面々を見回した。


「くそ、宮川の馬鹿め……」

道場破りたちは一様に苦虫を噛み潰した顔になった。




道場破りたちが気絶している鬼之助を引きずっていこうとするのを宗助が止めて、

鬼之介だけを結城家に残し、道場破りたちは立ち去っていった。


「この者には、円士郎様にかけた心の一方を解かせなければなりません」


宗助はそんなことを言った。

そういえばさっきも、今の俺の状態は「仮に解いた状態」だと言っていたが……。


どうも心の一方というのは、かけた者が意識を失おうが死のうが

それで解放されるというような類のものではないらしい。