恋口の切りかた

「ちょっと待てよ!」

俺は虹庵に言って、

「俺は納得できねえぞ、今の勝負」

宗助に詰め寄った。


「お前、今何をした? なんで俺は急に動けるようになったんだ?」

「何も」

宗助はいつもと変わらない能面の表情で、そっけなくそう答えた。

「何も!? 何もってことはねーだろ、お前と目が合って──それで……」


俺はあのとき視線が合った瞬間の、
どこか虚ろな──吸い込まれそうな宗助の目を思い出した。


「それで、お前が手を動かしたら──
俺は一対一の真剣勝負に、他人の手を借りて勝つ気はねえんだよ!」

「何を仰っているのですか」

宗助は肩をすくめて、

「そこの者が意識を失ったために、心の一方から解放されただけでしょう。
円士郎様の勝ちです」

「意識を──?」


言われて、正面に回って見ると、

やけに静かになったと思ったら、
鎧に包まれて立ったまま、鬼之助は口から泡を吹き、白目を剥いて気絶していた。


「円士郎様に鎧が飛びかかった刹那、既にこの者は失神しておりました」

宗助はよく通る声でそう言って


虹庵や他の門弟たち、道場破りの連中をチラと見回して素早く俺の耳元に口を寄せ、


「その時点で勝敗は決していると判断したため、俺が術を解きました。
──と言っても今は『仮に解いた状態』ですが」


俺にしか聞こえない声でそう囁いた。


「な──お前……!?」

「お静かに。説明は後ほど。
差し出がましい真似とお怒りならばご容赦を」


目を見開く俺に、
宗助は「主君を守るは忍の務め故に」と無感情に告げて俺から離れた。