恋口の切りかた

えっ? 私はびっくりして虹庵の顔を見た。

私に抜かれると語った虹庵の目は、冗談を言っているようには見受けられなかった。


虹庵は冬馬に腕を切り落とされて、うんうん唸っている男を一瞥した。

「言っておくが、この者の腕を落としたあの子よりも遙かに強い」

な、なに!? と髭面の大男が焦った表情になった。

「昔の私の名を継ぐ子だ、不服かな?」


ほう、と鎧武者は
眼鏡──のようなもの──の奥の目を面白そうに細め、

髭面大男は何だか顔面蒼白になって黙り込んでしまった。



「では、次の勝負を始めようか。武器はどうする?」

鎧武者が訊いて、大男が「刃引き刀で……」と言いかけ、

「師範代立ち会いのもとの正式な他流試合だ。
真剣以外の選択肢は我が流派にはない」

虹庵がキッパリ断言した。


大男が髭面の口をあんぐりと開けた。

「そうか、刃引き刀は特別な理由がある場合のみと言っていたな。
ふむ、じゃあ頑張れよ」


何やら冷や汗びっしょりの大男の肩に、
鎧武者が気楽な調子でガシャリと手を置いて──



白い雪の中、私と大男は真剣を手に向き合った。