恋口の切りかた

こ、この人かなり強い──!


私は驚愕した。


うーん……名前は偽物っぽいのになー。


「おお!」と道場破り仲間たちが歓声を上げた。


「さすがだな、佐藤殿!」

「ふん、当然だな」


──ってサトウ?


「伊藤じゃないじゃん! 佐藤じゃん!」

思わず私は声を上げた。


「──はッ!? い、いや失敬、伊藤殿であったな」

「う、うむ」


……偽名ですか。

やっぱりこんな真似、実名じゃできないってことなのかな。


まあ、それは良いとして──


「平八さん、弱すぎ……」

私にはこっちのほうが驚愕だった。


「それで本当に冬馬に勝ったの?」

「いや、あの、それはですね……」


私が言うと、平八はしどろもどろになった。


「姉上、まさか、それで杉山殿をお選びになったのですか?」

冬馬が頭を押さえた。

「へ? 冬馬、どういうこと?」

「確かに私は一度、杉山殿に敗れましたが──それは兄上と勝負して利き腕を骨折した翌日のことなんですよ?」


私は絶句し、平八が「す、すみません!」と床の上で平伏した。