恋口の切りかた

「姉上、何をヒソヒソと話しておられたのですか?」

遊水がいなくなると、冬馬が不審そうな顔で私に尋ねてきた。

「うん、見つかるかわからないみたいだけど、一応エンを呼びに行ってもらったの」

円士郎がいれば、冬馬と私を合わせた三人で三勝することができるかもしれない。

つくづく悪い時に道場破りが来たなあ、と私は嘆息した。



「言っておきますが」

私は五人の小悪党を睨みつけた。

「鏡神流は実戦重視の流派です。
普段の稽古でも竹刀は使いませんし、
他流との試合では木刀も使いませんから、そのおつもりで」

「どういうことだ?」

髭面大男が初めて怪訝そうに聞き返した。


「勝負はお受けしますが、条件があります。

鏡神流では、他流との勝負は命を懸けた真剣勝負。

普通は真剣、何か理由がある場合のみ刃引き刀(*)。
使うのはこのどちらかのみです」


さすがに、道場破りたちの間に動揺が走った。

どちらの獲物も、下手をすれば大怪我や死に繋がる可能性がある。


でもこれは、本当に鏡神流の決まり事なのだ。

だからこそ主不在で試合するのはマズいと思うワケでもあるけれど。


「試合は三本勝負ではなく、一度きりの真剣勝負。
負けて死ぬ覚悟がなければ、このままお引き取りを」


できればこれで引き下がってくれないかなー、なんて淡い期待もしつつ私は伝えた。

しかし──


「よし、わかった! じゃあその獲物で勝負しようじゃないか!」

すぱっと返事は返ってきた。

例の……全身鎧武者から。



そりゃそうだ……



この人は、この格好なら全然構わないに決まってるよ……



私はボーゼンとなり、

他の道場破り四人が、一斉に非難の目を鎧武者に向けた。



(*刃引き刀:普通の刀の刃だけ潰したもの)