恋口の切りかた

いやいや、待ってよ?
三勝すれば良いんだから、最悪あと一人強い人がいれば……



私は、事の成り行きを眺めている遊水のところに歩いていった。

「ねえ、遊水さん」

遊水は真剣を手にした皆伝の達人と、敵わないまでも素手で一戦交えている。

「遊水さんが、一試合請け負ってくれるっていうのは……」

「おいおい、何言ってんですか」

開け放たれた入り口に懐手で肩を預けていた遊水は、私の提案を聞いて吹き出した。

「馬鹿言っちゃいけませんぜ!
俺は鏡神流の門下じゃあねえんだぜ、おつるぎサマ」

「……だよねえ」

一縷の望みを砕かれて、私はがっくりと肩を落とした。


「じゃあさ」

私は声を潜めた。


「操り屋として、あの人たちが大人しく帰ってくれるように仕向けることはできる?」

「へえ? この俺に『依頼』をするってことですか」


遊水はガラリと目つきを変え、鋭い翠玉の輝きを私に向けた。


「言っとくが、タダじゃありませんぜ。
こっちも商売、それも裏商売だ。相場ってもんがあってね」

「……いくらくらいなの?」

「おつるぎ様の頼みなら、大マケにマケて一人二十両」


一人二十両ぉ!? それって──


「五人で百両? あの人たちに払うのと変わらないじゃない」

「左様で」


憮然とした私を見て、遊水は口の端を吊り上げて、


「俺も奴らと同じ悪党なんですよ、オツルギサマ」


と、私の名前のところを強調して言った。