恋口の切りかた

遊水は肩にかかった雪を軽く一払いし、
入り口の外に立ったまま、氷の彫刻のような顔をそばの風佳に向けて会釈した。

「これは風佳様、いつもお美しい」

「まあ、金魚屋さんったら……」

相変わらずの調子の遊水に、風佳が頬をぽっと染めた。

風佳が遊びに来ている時にも遊水は何度か顔を見せていて、
その不思議な外見と垢抜けた振る舞いで、すっかり風佳のお気に入りだ。


今日の遊水は、黒の長羽織を羽織った小袖姿で、襟元には頭巾をふわりと巻いた粋な格好だった。

「今日も金魚の様子をと思ったのですが、どうやら取り込み中に来ちまったようで」

遊水は深い淵のような色の瞳を道場内に向け、ふふっと白い吐息を漏らして苦笑した。


「遊水さん、この人たちのやり口って……どういうことですか?」

以前、円士郎から聞かされた
遊水のもう一つの商売。

それを思い出しながら私は訊いた。


「そのお侍様たちはね、
そうやって勝負を拒んだり、あるいは勝負に負けた道場に高額の手間賃や口止め料をふっかけて、

支払わない道場があると、徹底的に誹謗中傷の言を流して風評を落とすっていう──

──小悪党ですよ」

「何だと!? 貴様ら──っ」


冬馬が怒り心頭という様子で五人を睨みつけた。


冬馬の憤怒の視線にも、道場破りたちはどこ吹く風で薄ら笑いを作ったまま、

「さて、どうするのだ?」

などと平然と言った。


「よくもヌケヌケと──」

冬馬はぎりっと奥歯を鳴らし、

「姉上、ここまでコケにされて勝負せねば武士の名折れです!」

と私に小さく囁いた。


うう、私としては何とか帰ってもらいたいんだけどな。

でも、百両なんて私たちにどうこうできるお金じゃないし……名折れってことになるのかなあ?
武士って面倒臭い……。


そう考えてしまう私は、円士郎や冬馬たちと違ってやっぱり農民の出だからなのだろうか。


「いいだろう、勝負してやる!」

ついに冬馬は堂々とそう宣言してしまった。