恋口の切りかた

普段は口喧しくて苦手な感じばかりしているけれど、

こんな毅然とした態度で相手を睨み据える冬馬は、
線の細い顔立ちに、キリッとした目元が際立って見えて、なかなか格好良い気がした。


私がそんなことを思っていたら、

「冬馬様……」と入り口で風佳が呟くのが聞こえた。

何だか嬉しそうな顔で冬馬を見つめている。


風佳は、女の身で立ち入っては神聖な道場を汚すと言って、決して道場の敷居をまたぐことはしない。

大河様から厳しく躾られたのだそうだ。

これは母上も同じで、道場には絶対に入ろうとしない。


私も女だけど……父上は何も言わないし、入っても良いのかな、と不安になって聞いたら、

「おつるぎ様は、女の身とは言え、剣の申し子のような立派な武芸者ですもの」

風佳はそんな風に言っていた。

うーん、本当に良いのかなぁ……とも思ったけれど、
男の格好をしているし
今は男として元服までさせてもらったし、大丈夫ってことなのかな。


「ここのお子か?」

道場破りたちの中から髭面の大男が進み出て、冬馬を見下ろした。

「いかにも」

「ふふん。つまりこの道場では、強いのは師範だけ。
他の者ではわれらの相手もできぬような層の薄い腰ヌケ剣法ということか!」

「な──っ」

怒りで顔を赤くする冬馬の前で、髭面大男は鼻を鳴らした。

「ようく、わかった! では町でそのように触れ回るとしよう」

「言わせておけば──……っ」


うわ!?

腰の刀に手をかけた冬馬を見て、私は慌てた。


普通、道場内では帯刀しない。
腰の物は外すのだが、運悪く駆けつけた直後だったので
冬馬は刀を身につけたままだった。


「無礼者! 浪人か下級の出の分際で……っおのれ、そこへ直れ!」

「わったった! 待った待った! 冬馬、落ち着いて!」


今にも抜刀しそうな勢いの冬馬の腕を押さえて、私は道場破りの顔を見上げた。