恋口の切りかた

「冬馬様、おつるぎ様」

ちょうどこの時、襖の向こうから声がした。

何の気配も感じなかった私は、すぐに誰だかわかって──


「い、いつからそこに……?」


今の話の内容を聞かれただろうかと、緊張しながら声をかけた。

何しろ彼は──元忍者だ。
私や冬馬の話はともかく、風佳の話を父上や円士郎に告げ口されたら……

「たった今ですが」

嘘か本当かわからないが、そんな答えが返ってきて、

「どうした?」

冬馬が訊くと、襖が開いて
中間の宗助は相変わらず能面のように表情のない顔を出した。

「急ぎ道場へお越し下さい」

「何事だ?」

そう問う冬馬は、この中間男の正体を未だに知らない。

「門弟の方々が騒いでらっしゃいます」

私と冬馬は顔を見合わせた。
今日は父上が仕事で不在で、虹庵も顔を出していない。

円士郎は町へ逃亡中だし。


こんな時に道場で騒ぎ?


それが……と宗助はやや言い淀んでから口を開いた。

「巷で噂の道場破りが現れたとのことで」