恋口の切りかた

「で、でもさ……風佳は兄上の許嫁なんだし──」

「許嫁は許嫁ですわ。
わたくしがどなたをお慕いするかはまた別です。
そんなのわたくしの自由ですもの」


私は堂々と言い切った風佳に衝撃を受けた。


で、でも……
それは、まずいんじゃ──ないのかな。


風佳はそれから冬馬を見て、
にっこりと微笑んで
やっぱり頬を淡く染めて、尋ねた。


「と、冬馬様はいかがですか? 好いた女の方はいらっしゃるのでしょうか」

「え──いや、それは……」


予想外の不意打ちだったのか、冬馬が口ごもった。


冬馬は私のことでびっくりして、
剣術にしか興味がないと思ってたなんて、結構ヒドいことをサラッと言ってたけど……

私にしてみれば、冬馬のほうがよっぽどこんな話とは無縁に思えた。


だから、次の冬馬の言葉は、私にとって信じがたいものだった。


冬馬は、つと視線を逸らし、
冬の空気のようないつもの凛とした瞳を細めて


「おります」


と、ハッキリした声で答えたのだった。


「どなたかは申し上げることができませんが──思う方ならば、この胸におります」


そう言った冬馬と、

冬馬を見つめて頬を染めている風佳と、


二人の様子に、私は何となく嫌な予感がしたのだけれど──

そしてこの私の予感は、
後に起きる、結城家の存続にも関わるとんでもない事件に繋がっていたのだけれど──


だからと言って、この時の私に何かできただろうか?


何をすれば、

良かったのだろうか……?