恋口の切りかた

その日は風佳が屋敷に遊びに来ていて、例の如く円士郎は行方を眩ませて町に出かけてしまっていた。

第一印象が最悪だったせいか、
風佳は未だに円士郎のことを怖がっていて、
円士郎は円士郎で風佳を苦手そうにしている。

特に最近は、風佳が来ると彼は決まって家を空けてしまうようになって──

許嫁同士なのにな、と私は思う。
そう思いながらも同時に、

そんな二人にどこかホッとしている自分がいる。


風佳の相手を全くしない円士郎の代わりに、平司──ではもうなくて、冬馬のほうはと言えば

私と遊んでいる風佳のところに良く顔を出して、一緒に遊んだり話をしたりしていた。


その日も三人で座敷のタライの中の金魚を眺めて、

「あまり動きませんねぇ、どうしたのでしょう?」

おっとりと首を傾げる風佳に、

「金魚屋が申すには、金魚というものも冬眠をするそうです」

と、冬馬が説明をしていた。


「まあ、初めて知りました」

「春になればまたよく動くようになるのだそうですよ」

二人は凄く楽しそうに話していて、
最近私は何となく、二人の会話に口を挟みづらい。


所在が無くて、窓の外を見ていたら
薄墨色の空からは、白い雪がちらりほらりと舞い降り始めた。