恋口の切りかた

今さらのように、


あの雨の日──

好きな人とは一緒になれないの?


そう呟いた留玖の声を思い出す。


あの時は、当たり前だと割り切っていた武家の決まり事が──今頃になって、重くのしかかってきた気がした。



「羨ましい話じゃないか。一つ屋根の下、惚れた女と暮らしてるんだろ?」

遊水はニヤリとした。

「俺なら、とっくに手を出してるね」

「──できるかよ!」

俺は溜息をついた。

「……俺には既に、許嫁もいるんだぜ」

「いいことを教えといてやるよ、エンシロウサマ」

と、遊水はまた、ロクでもない話をする時の調子で言った。


「物事にはね、全て抜け道ってもんがあるんだ。

もしも『本当に本気で』結ばれたいと思うなら──方法はいくらでもあるんだぜ」


俺は、遊水が何を言おうとしているのか少し考えた。


「……駆け落ちでもしろってことか?」

考えた挙げ句に、俺が辿り着いた答えを口にすると
遊水はまた腹を抱えて笑い、


「まァ、そいつも一つの方法ではあるがね。
だが、俺が言ってんのは──

あんたは幸いそんな方法を選ばなくともいい立場にある、ってこった」


この時の俺には、その意味はさっぱりわからなかった。