恋口の切りかた

俺が遊水を振り返ると、遊水は大きく目を見開いていた。


「円士郎様、あんたどうやって──」

「俺も留玖も、親父からそういう技については
話だけだが……一応聞いてたんだよ。

だから留玖は実際に見りゃ、そりゃできるだろうし、

俺も実際にあんたの技を見た留玖から聞いて、
留玖にどうやったのか、道場で一回やって見せてもらったんだ」

「…………これを実際にやるのは、何度目だ?」

「そりゃ初めてだが?」

「…………」


コツをつかむのに何回か打つ必要があるかと思ったら、意外とできるもんだな。
と言っても、今の打撃では遊水のように人間を死に至らしめるまではいかないだろうが。

そんなことを考えながら、罅の入った壁を再び振り返って──


「やべェっ!? バレたら親父に殺される……」

俺は、自分ちの塀を破壊してしまったことに気がついて頭を抱えた。


ふふふ、と笑い声がして、
目をやると遊水はどこか投げやりな、
自嘲気味の表情を浮かべて俺を見ていた。


「するとアレかい?
お二人は二人とも、話だけ聞いてた技を一度だけ見て、
最初の一回目でいきなりできちまったってことかい?」

「ん?」

俺は眉を寄せた。

「まあ……それがどうかしたか?」

あっはっは、と遊水は声を上げて笑った。

「前言撤回だ。
円士郎様は何も焦る必要なんざないってようくわかったぜ」

「あ?」

「才能の差か──成る程ね。
お二人を見ていて、自分の才能の無さだけは嫌というほど実感だな。

天才ってのがどういうもんなのか、しっかと見せてもらった」


俺がポカンとしていると、遊水は肩をすくめて、


「俺にはやっぱり、斬った張ったは向かないらしい。
ま、人には得手不得手があるからな。得意分野で勝負させてもらうさ」


そんな風に言った。