恋口の切りかた

「しかし、円士郎様の焦る気持ちもわかるな」


金魚の桶を取りに行くと言って、留玖がその場を去り
彼女の稽古着姿の背中を見送って、遊水は目を細めた。


「あァ?」

「俺はね、昔──旅芸人時代に、大陸の出の芸人仲間にあの技を教えてもらった」

「あー、浅井って浪人を仕留めたとかいう内臓破壊の技か?」


留玖から聞いた、俺が駆けつける前までの話を思い出して言うと、
遊水は頷いた。


「正直、愕然とした。

俺はあれが形だけでもできるようになるまで、一年もかかったんだぜ?

それをおつるぎ様は、俺の目の前で──たったの一度見ただけで、やってのけたんだ。


ああ言うのを才能って言うのかね……」


「んー?」


俺は庭の端にある、屋敷を囲む塀の白壁の前に歩いて行った。


「お前が言う大陸の技ってのはさ、『甲冑砕き』とか『透かし当て』と似たようなもんだろ?」

「まあ、そうだな。大陸の武術ではまた違う呼び名だが」


俺はコンコンと白壁の漆喰を拳で軽く叩いてから──

拳を引き、
腰を落として重心をとり、



正拳に握った拳を壁に叩きつけた。



「な──!?」

背後で遊水が声を上げるのが聞こえた。


拳を引くと、やや間があってから、

俺が打った部分の白塗りの漆喰がパラパラとはげ落ちた。


露わになった土壁には大きな罅が入っていた。


「こういうやつだろ?」