恋口の切りかた

「棒手振は世を忍ぶ便利な仮の姿、とでも言いますかね。
あいつァ、俺たちみてェなヤクザもん相手の『操り屋』なんでさ」


銀治郎は、俺には耳に馴染みのないそんな言葉を口にした。


「あやつりや? そりゃいったい何だ?」

「言葉通り、人を操るんでさ」


ここを使ってね、と言って

銀治郎は髷を結った頭をこつこつと指で叩いて見せた。


「偽の情報、真の情報を流し、
嘘で騙し、真でも騙し、
言葉、人のうわさ話、思い込み──

そう言ったもんを利用して、人間を思った通りに行動させるってワケで」


銀治郎は苦笑した。


「あっしらみてえな者にとっちゃァ、こいつが便利でね。
揉め事の時にゃ、そりゃあ重宝しやす。

ところが、だ」


ぺしりと、銀治郎は手に持った扇子で膝を叩いた。


「考えてみりゃ、そんな奴が相手だ。
逆にいつこっちが欺かれて利用されるとも限らねえ。
油断のならねえ奴ってことでさ。

奴の言動は何が真で何が偽りか、そこんとこが読めねえ。

円の旦那、旦那も気をつけねェと──」



──操られちまいやすぜ?



銀治郎はそう言って、湯飲みを口に運んだ。