恋口の切りかた

毒を受けた遊水は二、三日苦しんだようだが、
無事に命を取り留め──


「あの人、結局なにをしてる人なの?」


数日後、

久々に屋敷を訪れた遊水に会うため、
道場を出て二人で庭に向かう途中、

留玖が俺に尋ねた。


「変なこと知ってるしさ、なんだか喧嘩慣れしてるみたいだったし……」

「ああ、そっか──お前はまだ知らなかったな」


俺は、
居店で会った翌日、虎鶫の銀治郎から
遊水の裏家業について聞かされた時のことを思い出す。



「円の字の旦那ァ、遊水とつき合ってなさるんで?」

貸元の店先に顔を出した俺を
銀治郎は坪庭の見える座敷に上げ、

開口一番渋い顔をして言った。

「旦那の顔の広さにゃ、驚くばかりだが──遊水ってのは……」

銀治郎は顔をしかめて首を一振りし、運ばれてきた湯飲みの中身を一口すすった。


髭を綺麗に剃った中肉中背の中年男は、
こうしていると人の良さそうな普通のオヤジにしか見えない。


銀治郎は湯飲みを置くと、眉間に皺を作って俺の顔を覗き込んだ。


「昨日は本人の前だったんで黙ってやしたがね、

奴ァ、ヤバいですぜ。

悪いこたァ言わねえから、やめといたほうがいい」


ヤバい?


「どういう意味だ?」

ただの金魚屋でないのは確実そうだが──。


見た目はちょっと粋で変わった容姿の優男にしか見えないあの男、
ヤクザの親玉にこうまで言わせるとは、いったい何をしているのだろう。