恋口の切りかた

朝飯の席に揃った兄弟の中に留玖の姿がなくて──

母上や女中に訊くと、風邪で熱を出して寝込んでいるという答えが返ってきた。


奈津様に言われて粥を用意するところだと女中から聞いた俺は、屋敷の台所に向かった。


粥か……粥なら俺も作れるな。


実は、もしもの時に備えて、俺は虹庵から傷の手当ての仕方や野宿の仕方なんかも学んでいて

以前、食べられる野草の見分け方と一緒に粥の作り方も教えてもらって、
何度か作ったことがあった。

こういう事に通じておくのも、武士なら重要だと思うワケだ。


「留玖の粥なら、俺が用意して持って行く」


ってまさかこんな形で役に立つとは思わなかったが……
台所に入るなりそう宣言して、

本来なら、

結城家のような武家の子息が台所仕事をする──どころか
台所に顔を出すこと自体が有り得ないだろうから、これが平司だったら大騒ぎになっただろうが

常日頃から俺の奇行に慣れまくっていた使用人たちは「ああ、またか」みたいな顔をしただけで、
大した反応も見せずに場所を開けた。


「こ、このことは誰にも言うなよ!」


自分でも顔が赤くなるのを感じつつわめく俺にも、ハイハイと皆淡白だった。