恋口の切りかた

明け方に屋敷に密かに戻った俺は、その日、朝から金魚がどうのと騒いでいた留玖に叩き起こされ──

「昨日、遅くまで起きてたの?」

留玖は何も知らずに、
不思議そうに俺を見上げて
そう問いかけて

その純粋な視線とぶつかって、俺は思わず目を逸らしてしまった。


まさか遊郭で女を抱いてきたとは暴露できず、

曖昧にごまかし──


相変わらず男の着物に身を包んだ留玖を眺めて、

思った。


俺が留玖のことを意識しないように振る舞って来られたのは、

彼女がいつもこんな格好をしていて、

可愛い奴だとは見えたとしても
あまり女としての色香を感じないせいもあるのだろう。

こいつも女の格好をしたら、
あの遊女たちのように色っぽく見えたりするのか……?


そんなことを考えたら、無性に留玖をからかいたくなった。

そして同時に


触れたい、と感じた。


汚れのない瞳の少女は、昨晩の遊女と違って

どこか触れ難くて

──随分と勝手な男の感情だとは思うが──



このときは、頭をなでることくらいしかできなかった。



そうしたら、留玖が可愛い反応をして

それが愛おしくて


遊女から言われた言葉が蘇った。


「兄として心配している」

白々しい言葉を口にしながら、

自分が彼女を「妹」として見ることができない事に気がついて、自分にとって彼女がどういう存在なのかわからなくなる。



恋──か。

あの後、耳にした言葉が……

四年以上も一緒に暮らして、今さらのように、
まとわりついて離れなかった。