恋口の切りかた

俺は内心、狼狽えた。


「へえ、じゃあ、あんたに一目惚れでもしちまったのかね」

そんなセリフを返して、鈴虫の柔らかい唇を吸って──


しかし、

遊女に言われた瞬間、俺の心の中に浮かんだのは


木刀を構えるあいつの──無垢な笑顔だった。



恋をしている……?

これまで無意識に、遠ざけ続けてきた部分を唐突に目の前に晒され、


そんな馬鹿な、と否定して──否定しきれなかった。


そんなことがあるワケがない、
そんなことがあっても




──どうしようもないのに。