恋口の切りかた

彼のその言い方や、鳥英を見つめる目つきは、私が知らないドキリとするもので──

私はまた不安が這い上ってくるのを感じた。


「訊いたさ。最初に何事かとね。
だが明確な答えが返って来なかった」

鳥英はあっさりした口調で言って、

「君子危うきに近寄らずだよ。
そういうヤバい話に首を突っ込んで巻き込まれるのは御免なんでね」

「なるほど」

ふ、と──

円士郎が妙に大人びた笑いで頷いた。



私は取り残されたような気分で、

そんな二人を見つめて──



遊水のことを彼女に頼んで、

長屋を後にして、

白々と東の空が明るくなった道を円士郎と二人、屋敷へ向かって歩きながら、


私のそばにずっといてくれた円士郎と

私が知らない所で、鳥英と親しくなっていた円士郎と


二つの事実が交互に浮かんでは消えて、

私は苦しいような
胸を締めつけられるような
そんな感じがした。



この気持ちの正体が何なのか……



もしかすると私は心のどこかでわかっていたのかもしれなくて



けれど──



それは許されないことで

認めてしまえば、辛いだけだから



私は気づかないフリをし続けることになる。