恋口の切りかた

鳥英は横になっている遊水を振り返った。

「と言っても、手当てをしたのは虹庵先生だし、私はほとんど何もしていないがね」

「お、おう。──あれ? 虹庵は?」


虹庵の姿が消えていることに気づいて、円士郎が首を傾げた。


「とうに帰ったよ。今夜も食中りの役人が運び込まれたらしくてな、──あの男はとりあえずここに置いて様子を見ることになった」

遊水を示して鳥英はそう言った。


「食中りの役人? 今夜も?」

円士郎が何か引っかかった様子で聞き返して、

「私も今聞いたのだが……何でもここの所、町回りの役人が深夜に腹痛で運び込まれることが多いらしくてな。
まったく、辻斬りを捕まえもせず何をやってるのかと思えば、だ」

やれやれと肩をすくめて鳥英が答えた。


それって──


「エン、まさか……」

私は円士郎と顔を見合わせて、

「ああ、あの忍の仕業だろうな」

円士郎が頷いた。


見回りの役人の姿を見かけないと思ったら……

それこそ、一服盛ったということなのだろう。


「あの野郎、良い仕事してやがったぜ」

「忍?」

鳥英が整った眉を寄せ、円士郎が「いや何でもねえ、こっちの話だ」と手を振った。