恋口の切りかた

特にやることのない私と円士郎は、虹庵たちの邪魔にならないよう部屋の隅に並んで座っていた。

「エン……」

私は隣に座る円士郎を見上げた。


円士郎はこの、鳥英さんという女の人を随分信頼しているように見受けられた。
今も、何だか頼もしそうに目をすがめて彼女の姿を見つめていて──


彼女のほうも、さっき円士郎のことを「あいつ」と呼んでいた。

あいつ──。

その呼称には、少なからぬ親愛の情が込められているように感じた。


遊水はともかく、

私は、この佐野鳥英という絵師先生だか学者先生だかについては、全く知らなかった。

だから……何だというのか、自分でもよくわからないけど──


「鳥英さんとは、仲……良いんだね……」

「あ?」


キョトン、とした円士郎を見て、私は慌てた。


なんで私、今こんな事を言ってるのかな……。


必死に何か続けようとしたら、

「綺麗な──人だよね」

ますます自分でも何を言ってるのかわからない言葉が
口をついて出た。


「え? 留玖?」

私の顔を覗き込んで、円士郎が焦ったような声を出して、


なぜだか私はそれが腹立たしくて



うつむいてしまった。