恋口の切りかた

フクジュソウ、キミカゲソウ、キョウチクトウ、オモト……。

短い時間で即座にそれだけの名前を挙げてみせた若い女性を、私は驚きながら見つめた。

私が辛うじて聞いたことがあるのは万年青──オモトくらいで、しかも毒草だったなんて全く知らなかった。


「薬がないというか……どれもそれ自体は薬でもあるんだ」

と、虹庵は長屋の中に入って来ながら言った。

「少量では薬にもなるが、わずかに量を間違えただけで猛毒となる」



薬を毒として使うなんて──。



私はあの柿色の装束に身を包んだ忍の姿を思い出して、再び背筋が寒くなる。


「症状を和らげながら、後は自然に回復するのを待つしかないな」

虹庵はそう言って、
円士郎が遊水の持っていた毒消しのことを告げ、
遊水が何から作られているかを口にして、
女の人が書物で調べた。


驚いたことに、遊水の毒消しの中にも万年青が含まれていた。


「ほう? 『毒をもって毒を制す』ではないだろうがね」

女の人は興味深そうに言って、
毒手裏剣を受けた時の遊水の怪我を手当てしている虹庵と、薬について話をし始めた。


私はそんな女の人を眺めて、彼女と円士郎が親しげに会話していたのを思い出した。