恋口の切りかた

「渡しておくぞ」

男がそう言って、片手を動かし──何かを投げる。

私と円士郎は身構えた。



コン、という音と共に、

何か小さな筒のようなものが
うずくまった遊水の足下に転がった。


「都築様が言っていた薬だ、飲んでおけ」


遊水が顔を上げて忍を見た。

男は胸を押さえて喘いでいる遊水に視線を注ぎながら、やはり抑揚のない調子で言った。


「だが解毒剤ではない」

「なに──? どういうことだ!?」


声を上げた円士郎に、忍者は冷淡な答えを返した。


「残念ながら都築様に手を貸していようがいまいが、どのみち手裏剣に塗った毒薬の解毒剤はなかったということだ」

「だましたのか!?」

「いいや。都築様も詳細を知らなかっただけだ」


忍はかすかに鼻を鳴らして、勘違いするなと言った。


「必ず死ぬというわけでもない。

それは症状を和らげる薬だ。
あとはさっき言っていた本草学者らにでも診せろ。

助かるかどうかはその男の体力次第だな」

「────っ」


円士郎は奥歯を噛みしめてギリッと鳴らした。


遊水が片手で胸を押さえたまま、小刻みに震えるもう一方の手で薬の筒をつかんだ。