恋口の切りかた

何──!?

弾かれるように
私と円士郎が振り向いた先には、



すぐそばの欄干の上に、

闇に溶け込むようにして影の如くたたずむ人間がいた。



円士郎が、凄い力でぐいっと私を背中に引き入れて

血だらけの刀を構えた。



「──てめえが、毒手裏剣を打った忍びの者か」

と、円士郎はいつもの口調に戻って言った。


欄干に立つ人間は、背格好と声からどうやら男のようだった。
暗くてよくわからないが、茶色っぽい──柿色のように見える装束に身を包んでいて、

それは農村で昔よく見かけた、村人たちの野良着にどこか似たような──
動きやすそうな格好だった。

手ぬぐいで覆面をしている。


慌てて、私が手放した刀に手を伸ばそうとすると、


「都築様が死んだ今、これ以上お前たちと争う気はない」

男は、低いがしっかりと通る声でそう言った。


それから、刀を構える円士郎と、私が橋に突き刺した刀と、私とを見て、

「そちらが結城円士郎様ということは、結城のおつるぎ様か。
まさか女の身で──恐れ入った」

と、緩急のない淡々とした口調で言った。