【剣】
「真念神影流、都築小一郎だ」
元家老だという都築が、そう名乗り──刀を振りかぶった。
円士郎が、いつかのようにギラギラした瞳で都築に刀を向けたまま、
口元に笑みを作った。
そんな二人を見ながら、
円士郎は──これが真剣を使った初めての実戦なのだと──
これまで数知れない人間を斬り続けてきたこの相手と比べ、あまりに経験が足りな過ぎるのだと──
私は思い出す。
自分にとって最も大切な人がこれから、目の前で殺されるかもしれない。
大声を上げて、見回りの役人でも誰でも良いから人を呼ぶ。
それが、どう考えても私のとるべき道だ。
普通の──少女だったならば、そうしていただろうと思う。
けれど
こんなに楽しそうに笑みを浮かべている円士郎を見て、私は何故か──
邪魔をしたくないと、そう思ってしまった。
それどころか──私は──
羨ましい、と
これから真剣で命を懸けて一度きりの勝負をできる円士郎と都築が、羨ましいと
二人の姿を見ていて、
そう思った……。



