恋口の切りかた

「最近知り合った本草学者(*)がいるんでね。
とっとと終わらせてそいつと虹庵先生の所に連れて行くさ」


解毒剤が存在する毒ということは、まさにこのような交渉に使用する可能性があるということだ。

純粋な殺害用の猛毒とは違って、すぐさま死に至るような類のものではないハズ──

そう考えて、俺は刀を構えた。


「そうか──残念だ」


都築は低く呟いて、チッと舌打ちした。


「うまくゆかぬものだな。
まさか余計な人間を一晩に三人も斬らなくてはならんとは──面倒な。

……これまでこんなことはなかったと言うのに……全く嫌な夜だ」



ふふ。

小さく笑い声を上げたのは遊水だった。


「物事がうまくゆかなくなる時というのは、大抵こんなものですよ」


青ざめた顔を上げて、遊水は緑色の瞳で都築を見据えた。



「そう『だった』でしょう──都築家老様」




(*本草学者:もともと医薬に通じる中国の学門だが、この時代の日本の本草学は博物学なので、ここでは動植物・鉱物学に通じた学者のこと)