俺は遊水を振り返る。


遊水は心臓の辺りを押さえて、肩を上下させながら息をしていた。

明らかに、俺が来た時よりも状態が悪化している。


「薬はもう一人の仲間が持っている。
協力すると言うならやろう」

都築の言うもう一人の仲間というのは、遊水に毒手裏剣を打った忍のことのようだ。

「どうする?
仮にこのままやり合って私を斬っても、薬は手に入らんぞ」

「テメェ──!」

俺は怒りで目の前が赤くなるのを感じた。


「これまで仲間にした連中ってのも、こんな脅迫まがいの真似で従わせたのか!?」

「──いや」


俺のこの問いには、都築は意外にも首を横に振った。

「奴らは私に恩義を感じてくれたのだ。

果たし合いに応じて私に敗北したところを、命を助けてやった

今回のお前たちは──まあ色々と想定外だったというところだ」


果たし合いに応じて……か。

何故、こいつらが斬り殺す相手に果たし状などを送りつけていたのかは、未だに謎だ。


「さあ、どうする? 薬はいらないのか?」

そう言う都築を俺は睨みつけて──


「耳を貸すな!」

怒鳴ったのは遊水だった。