恋口の切りかた

私は目を見張った。



振り下ろされた刀は空を斬り、

遊水はその隙に相手の懐に飛び込んでいる。


背を向けることで──

逆に相手の刀を導き、
読んで、
かわした──。


理屈ではそうだが、余程の思い切りがないと実戦で敵に背を向けるなどできない真似だ。


絶対にただの金魚屋のワケがない。
この人、いったい……!?


遊水はそのまま、掌底の形にした右手を相手の腹に叩き込んだ。

相手がたたらを踏んで、それから橋の上に膝をつく。



ここでようやく、足を蹴られた男が体勢を立て直し──

慌てて遊水から距離をとった。



遊水はすぐさま膝をついた男から離れ、再び私を庇う位置に立って構える。


「あ、あの──助けてくれて、ありがとうございます」

私は衝撃を受けながらもお礼を言った。
先程も今も、遊水は戦力外の私を守る動きをしている。

「いえいえ」と、構えを解かないまま遊水が短く答える。

その背中を見つめながら、
いい人なのか悪い人なのか……私はこの人がよくわからなくなった。


でも、少なくとも今は味方──それもとびきり頼りになる味方と考えて良さそうだ。



「ぬ──こやつ、妙な動きを……」

刀を構えた男は唸って、座り込んだ仲間を睨んだ。

「何をやっている! さっさと立て! 先に二人であの男を斬るぞ」

答える代わりに、



遊水に殴られた男は、うめきと共に口から夥しい血を吐き出した。