恋口の切りかた

「こういう斬った張ったは専門外でしてね、今のおつるぎ様程度にしか動けませんぜ」

十六夜の月に照らされて剣呑に輝く二本の刀を前にして、
すくみ上がるでもなくそんなセリフを口にする遊水は『ただの金魚屋』には全然見えなかった。

言葉とは裏腹に、その態度からは随分と場慣れしている様子が窺えるけれど。


「『今の私程度になら』戦えるんだ?」

よろよろと欄干から手を離し、私は言った。

遊水の言葉は謙遜に思えたが、私のこの言葉は完全に強がりだった。


絶句しているような気配があって、それから

顔は見えなかったが、遊水の背中から笑っているような空気が伝わってきた。





そして、




男たちが二人同時に動いた。


遊水に転ばされたほうの男が真っ直ぐ遊水に向かって、
先刻私の木刀を斬り飛ばしたほうの侍は遊水の横手に回り──狙いは後ろの私だとわかる。


遊水が小さく舌打ちした。


彼はあろうことか、自分に向かってくる男に背をさらして、
私を狙った相手の足に蹴りを入れた。


さすがにこれは予想していなかったようで、男が体勢を崩す。


──が、同時にもう一人の男の刀が
無防備な遊水の背に迫っている。



「──っ遊水さん!」




私は叫んで──





刀が、振り下ろされた。