恋口の切りかた

「おのれ……背後からとは──不覚! 油断した」

言いながら身を起こした男と、刀を構え直す男から
私を庇うように、遊水は前に出た。


「しかしこの状況は、どういうことですかねェ」

欄干に掴まって身を支えている私を肩越しに見やり、遊水は苦笑する。

「なんだって──円士郎様ではなく、寝間着姿のあなた様がこんな所にいらっしゃるんで?」

言われて気づいた。
木刀は腰に差して出て来ていたものの、自分でも相当急いでいたためか、私の格好は寝間着のままだった。

「しかも獲物はそれで、相当調子も悪そうと来たもんだ。
参ったねこりゃァ──どうするか」

相変わらず、ちっとも参っていなさそうな、
ふざけているような緊迫感のない口調で言って遊水は肩をすくめた。

「円士郎様はどうされました? お姿が見当たらねェようですが」

「エン……って、──いったいどういうこと?」


私は戸惑いながら、遊水の背中を睨んだ。


「エンは──遊水さんと一緒なんじゃないの?」


そうだ、

円士郎はこの人に唆されて、
私を置いて
今日も屋敷を抜け出して
辻斬りを──


していたんじゃないのか。