恋口の切りかた

「やはり、そういうことか」

更に別の声が、橋の上に響いた。



「成る程ねェ、複数犯か。どおりで手練ればかり狙って殺せるハズだぜ」

今度は私にも聞き覚えのある声だ。


声の方を振り向いた──その先で、

私の背後に回り込んでいた男の体が吹き飛んだ。

男はもんどり打って橋の上を転がり、
私に向かって刀を構えた男の足下で止まる。

「な──今度は何奴だ!?」

仲間を転ばされ、私の前の男が驚愕の声を上げた。

蹴り飛ばしたか突き飛ばしたか、いずれにせよかなりの力で押さなければ、大の男がこうまで見事にすっ飛ぶことはないだろう。


「何奴と聞かれましても、お侍様」

男を転ばせたその闖入者(ちんにゅうしゃ)は、涼しい顔で私に歩み寄りながら答えた。

さっきの〈謎の声〉の「人が来る」という警告は、この相手に対してだったようだ。


「私はしがない金魚屋でございますがね」


雲間から射し込んだ月光が、美しい白い顔を妖艶に照らし出した。
一纏めにした金色の総髪が夜風になびいている。

「遊水──さん?」

「左様で」

そのあやかしのような美貌に微笑を浮かべ、
突如としてその場に割って入った若者は、私に頷いた。