恋口の切りかた

熱で頭がおかしくなったのかと訝りつつ、この瞬間も、恐怖と似て非なる──危険な胸の高鳴りが感情を支配していることに気がついて、



少しだけ、

思い出した。



極限状況の中、生まれて初めて六人の人間を斬ったあの大晦日の夜、

自分が何を考えていたのか──。




──とその時、

『おい!』

押し殺したような囁きがどこかから聞こえて、私は意識を引き戻された。

『人が来るぞ!』

橋の上にいる二人とは別の声だ──が、辺りには他に人影は見えない。


「ええい、今さら──もう顔を見られた! 何をやっていたんだ!」

私の前で刀を構えた男が、その〈声〉に怒鳴った。


『なに?』

〈声〉は驚いたように一瞬沈黙して、

『──だからここはよせと言ったんだ。人の来る方向が絞れん。見張りづらい』

「遅いわ!」

どこからともなく聞こえる〈声〉に向かって、目の前の男が忌々しそうにわめいて──