恋口の切りかた

川縁に吹く風に、私のそばで柳の枝がサワサワと揺れた。


闇に沈んだ真っ黒な川に架かる木製の橋は、真ん中が大きく反り上がった立派な太鼓橋(*)で、町の大通りに続いている。

その、反り上がった橋の頂上に



『何か』が転がっていた。



『何か』──倒れているのは人間だ。

だらりと、力無く垂れた腕が目に入った。



その倒れた人からトロトロと、
木組みの反り橋の上を、黒い水が私のほうへ流れ落ちてくる。



まるで夜の川のような黒い流れは──

──血だ。


たった今斬られたばかりの死体から流れ出した、鮮血の筋だった。




私は橋の上を見上げる。

せり上がった橋に隠されて、こちらからは倒れた人間しか見えないが──人の気配が確かに感じられた。


──まだ、そこに下手人はいる。


私は震える足で、ゆっくりと橋を上り始めた。




(*太鼓橋:アーチになった橋)