恋口の切りかた

空の上では雲が凄い早さで動いていて、足下を照らす十六夜の月は隠れたり現れたりを繰り返している。

時折降り注ぐ明るい月光を頼りに、
私は前日、円士郎と遊水が待ち合わせていた場所に急いだ。


不気味に静まり返った夜の城下町を走り、

息を切らせて昨夜と同じ界隈に辿り着き
辺りを見回してみる──

──が、しかし

辺りには二人の姿どころか人っ子一人見当たらなかった。



辻斬りが横行しているというこんな時期、こんな時間に夜道をうろうろする者などいないということだろう。


再び上がってきた熱のせいか、視界がふわふわする。

ともすれば意識が遠退きそうになる頭を、必死に働かせて──



今夜の相手は久本左内。

遊水の言葉を思い出し、私は銀治郎親分さんのところに向かった。




柳の木が並ぶ川のそばの道を駆け抜け、川に架かった橋の横を通り──



その時だった。



どたっという、重い物を落としたような音が橋のほうから聞こえ、私は足を止めた。