恋口の切りかた

次の日──


私は布団から出たくなかった。

どんな顔をして、父上や母上や──円士郎に会えば良いのかわからなかった。


円士郎が辻斬りをしていた。

そんなこと、誰に言ったら……いや、誰にも言えない。


ひょっとして何か理由があるのかな。

世間では斬られたのは悪人ばかりだとか、世直しだとか騒がれている。
円士郎が斬っているのは、悪い人ばかりで──本当に殺されても文句が言えないような人なのかもしれない。
私だって昔、強盗を六人も斬って、りつ様を人質にした若者を斬ったのだ。

円士郎も何か仕方のない事情があって

きっと、そうだ──


私は自分にそう言い聞かせて、

だけど



──あの村で、雪の大晦日に殺された、私の小さな弟の亡骸が思い浮かぶ。



違う。
辻斬りをしてても円士郎は、あの強盗たちとは違う!


いくらそう思っても


土間に転がった弟の死体の周りに広がる黒い水たまりと、
昨晩見た男の死体の周りに広がった黒い水たまり。


それが重なって──


頭ががんがんして、何だか吐気までしてきて
私は何も考えたくなくなった。