恋口の切りかた

「おい、こっちだ。悲鳴で人が集まる」

近くの道の先にいた遊水が手で円士郎に合図しながら、そんな風に言った。

「顔を見られたら事だ、すぐに離れるぞ」

「ああ」

円士郎は頷いて、遊水とともに走り去った。




生臭い──血の臭いだけが、その場に残された。




私は茫然としながら、隠れていた物陰から出て、円士郎が出てきた小道の先を覗き込んだ。

ばくばくと、自分の心臓の音がうるさく聞こえる。



暗い道の先に──見知らぬ男が一人倒れていた。



どす黒い水たまりが、男の周りにできていて、今まさにじわじわと広がりつつあった。