恋口の切りかた

「なに、今の──」

私は思わず声に出して呟いた。


嫌な汗が背中を滑り落ちる。

まさか──


私はとっさに、腰から木刀を引き抜いた。

今の私の格好も、先程の円士郎と同じで動きやすい稽古着だ。
と言っても、元服して一人前の武士となった円士郎と違って、自分の刀なんて当然持っていないので、木刀を持ってきていた。


私は悲鳴の聞こえてきた方向へ、土壁が続く人気のない裏道を走って──


幾つか角を曲がったところで、

慌てて近くに積まれた荷物の陰に隠れた。



近くの小道から、円士郎が走り出てきたのだ。

ぷんと、生臭い臭いがした。