恋口の切りかた

わ……! 凄い。

思わず私は見とれてしまった。

円士郎ってこんな軽業師みたいな真似もできるんだ、と思って……


そう言えば円士郎は、普段から町中でもひょいひょい塀を越えて、縦横無尽に走り回っていたのを思い出した。

塀の向こうは水路だが、円士郎は塀の上から跳躍して向こう側に姿を消した。

水音はしていないから、水路を飛び越して着地したのだろう。


どうしよう。

私は焦った。
まさか円士郎がこんな風に屋敷を抜け出していたとは思わなかった。

私と円士郎では身長が違う。
私にもあんな真似ができるだろうか。

迷っている時間はない。
ぐずぐずしていたら円士郎を見失ってしまう。


私は意を決して、円士郎よりも助走の距離を長くとり、
松の樹を足場にして、跳躍した。