恋口の切りかた

すっぽかしてやろうと思わなくもなかったが、俺の心情を言い当てた男の言葉が気になって


結局、その日俺は夜五ツを超えたころ、屋敷を一人抜け出した。



最近は時々こうして夜に屋敷を抜け出しては、
すっかり顔なじみの貸元の賭場で遊んだりしていたので

慣れ親しんだ夜の町を歩いて、遊水という男に言われた店に向かった。


暖簾をくぐって居店に入ると、薄暗い店の中に金の髪の男がいた。


足つきの長板に片足であぐらをかいて座り、酒を飲みながら俺を待っていた男を見て、

俺はへえ、と思う。


昼間の法被姿とは違って、

遊水という男は藍の小袖に黒い長羽織姿だった。


中に着た絞りの鮮やかな生地がちらりとのぞいている。

そこらの客とは違って、何とも垢抜けた──粋(いき)な格好だった。



当然被り手ぬぐいなどしていなかったが、


灯りで輪郭がぼうっと、妖しく光って見えてはいても

さすがに夜だから、金の髪も昼間ほどは目立たない。



「よう」

短く声をかけて、
俺も遊水の向かいの長板にどっかと片あぐらで腰を下ろした。


「お待ちしていましたよ」

と言って、白い顔が笑った。